シュウカツ先の落とし穴-「ブラック企業」感想

ブラック企業

「ブラック企業は最近よく目にする言葉だけど、実際はどうなんだろう?」という思いから、この本を手に取りました。かくいう私も、人間関係があまり良くない職場で働いており、「ウチの職場も、ひょっとしたら…」ということも頭によぎりましたが、この本を読んで、ブラック企業の新人搾取方法が想像以上に組織的であることや、社会にも無視できない損失を与えることを改めて感じました。

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「ブラック企業」は、年間数百件もの労働相談を受けるNPO法人POSSEの代表、今野晴貴氏が執筆した本です。前半では、実際の相談事例を交えながらブラック企業の実態に迫ります。企業名非公開の相談事例が多いですが、一部の企業名は公開されています。後半では、ブラック企業から身を守る術をや、ブラック企業が社会に与える影響が書かれています。

以下に、気になった箇所を引用しながら、私の感想を述べてまいります。

ブラック企業は人格をも破壊する

印象的であったのは、多くの違法行為が存在し、凄惨なハラスメントの横行といった状況にもかかわらず、相談者はみな「自分が悪い」と口々に訴えたことである。
 ここにこそ、ブラック企業問題の深刻さが映し出されている。企業への異常なまでの従属と、人格破壊という、これまでとは明らかに質の異なる問題としての、「ブラック企業の構図」が見えてきたのだ。(p23)

私が運営している愚痴吐き掲示板にも、職場への愚痴が吐き出されています。人間関係に対する怒りが多いですが、なかには過剰に自分を責めている方もいらっしゃいます。ブラック企業にとらわれていないと良いのですが。

 これらハラスメント手法に共通するのは、努力しても何をしても罵られ、絶え間なく否定されるということである。人格破壊の非常に巧妙かつ洗練された手法といえる。人格を破壊するようなハラスメントが横行しているがために、社員は「次は自分かもしれない」と怯え、緊張の糸を張り詰めながら仕事をしている。(p38)

上司や先輩が、特定の社員をスケープゴート役に仕立て上げ、人前でも平気でダメ出しをする。私自身も、昔、ターゲットにされ、日々怯えていた時がありました。ひどい時は、「後で先輩に何か言われたら嫌だな」という思いから、人に話しかける事さえもできなくなりました。今思うと、人格破壊の一歩手前だったのかもしれません。

では、このような企業で自分の身を守るにはどうすれば良いのでしょうか。

ブラック企業での選択は、戦うか逃げるか

世の中を見渡すと、なぜか、ブラック企業を批判する若者は「甘い」という論調が目立つ。いわく、「ブラック企業に入ったのは自己責任」「ブラック企業とかいわずにがんばっている人もいる」「ブラック企業なんていっているのは、甘い人だ」などである。(p124)

私も言われた事があります、「もう少しがんばれ」と。私の場合は、先輩が退職されたので、会話の恐怖も治り、今では元のように話せるようになりましたが、もし、先輩がずっと職場に居続けたら、どうなっていたかは分かりません。

辞めさせるためのパワーハラスメントや業務命令が行われている場合には、どんなに耐えても先はない。耐え続けたとしても、結局は、鬱病にかかりキャリアを台無しにされてしまう。(p124)
(略)
ブラック企業に入社してしまってからは、鬱病になる前に、辞めるか争うかを選択するしかない。そこには「我慢していれば報われる」というウエットな感情の入り込む余地はない。そしてもしも、ただ我慢しろというだけならば、それは思考停止だというほかない。必要なのは、冷徹なまでの「戦略的思考」なのである。(p126)
(略)
本当に必要なことは、若者が鬱病にされたり殺されてしまったりする前にブラック企業の体質を改善することである。そのためには一人一人が戦略的思考を持ち、さらにはブラック企業そのものを変えていくために、労働法と団体交渉を利用すべきなのだ。(p145)
(強調部分は著者によるもの)

職場でいじめやパワハラのターゲットにされた時の辛さは、正直、当事者にしか分からないと思います。他のターゲットがやられているのを見ている時とは、精神的ダメージの大きさやモチベーションの落ちっぷりが全然違います。

「我慢していれば報われる」などとアドバイスをくれる人は、所詮他人。口ではキレイ事を言っていても、心の底では、「自分がターゲットにならずに済むために居て欲しい」という腹黒い思いも、もしかしたらあるのかもしれません。

私が入社する前にパワハラを受けていた方は、「もう少し我慢しては?」という周りの静止も空しく、耐え切れずに退職され、今は別の仕事についているそうです。職場メンバーは「辞めなければ良かったのに」と言いますが、私は「早いうちに、戦うか逃げるかの見切りをつけて正解」だったと思います。

もっとも、もし、ここで団体交渉で戦ってくれていたら、私へのいじめも無かったかもしれません。そう考えると、著者の言うとおり、ブラック企業を変えるためには、交渉していく事が最善なのかもしれませんね。

ここから先は、日本の就職活動がブラック企業がのさばる素地になっているというお話です。

自己否定の素地はシュウカツで作られる

日本の就職活動においては、「何が採用の基準となっているのか」がはっきりしないため、不採用とされた学生はひたすら自分の内面を否定し続けることを求められる。象徴的な言葉が「自己分析」である。生まれたときからこれまでの態度、自分がどういう人間であるのか、こうした抽象的な次元で自分自身を否定し、企業にどうしたら受けいれてもらえるのか考え続けさせる。ある種の精神的な試行錯誤、自己変革が求められていく。(p193)
(略)
日本の企業が求める能力は、「コミュニケーション能力」というあいまいで抽象的な基準がもっとも重視され、職業上の専門性は軽視されていることが知られている。就職活動と具体的な職業能力が結びつかないために、「自分探し」を強要される構図である。(p194)

「コミュニケーション能力」には、空気を読む事や、同調圧力にまかれる事なども含まれているのでしょうか。

私が就職活動を行ったのは10年以上も前ですが、今の職場に入社前提の面接に行った際、「人とトラブルになった事はあるか」という主旨の事を聞かれ、少々違和感をおぼえました。まだ青かった私は、一通り答えた後、「足の引っ張り合いとか、ドラマのような事があるのですか?」なんて笑いながら聞き返しましたが、それに対する返答は「そこまでは酷くない」というものでしたね。そのため、酷くはないけど何かしらのトラブルがある、という事はこの時点で既に察していたのですが、結局、見事にターゲットにされてしまいましたね^^;

私の職場では、パワハラに耐える事の他にも、上司や先輩のサボり・中抜けを黙認することや、目上の指示にはまず「ハイ」と従順に従い意見を言わないこと、備品はポケットマネーで買う事が良しとされてきました。

ブラックな部分を見てみぬフリをしたり、ブラックな部分に耐え忍ぶ事こそが、コミュニケーション能力を重視する真の目的…とは思いたくありませんね^^;

haniwaのヒトコト

ここでは、私が感じたことを中心に述べましたが、書籍「ブラック企業」には、これ以外にも多数の興味深い内容があります。社会問題にもなりつつあるブラック企業の実態と対策を知りたい方にオススメです。

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