やっかいな中年女性の代名詞でもある「お局様」。 この言葉が広く使われている理由は、お局様にまつわるトラブルが多くの職場で起こっているためではないでしょうか。
パワハラが定義され、労働相談や訴訟も年々増加傾向にある中、お局様をはじめとした社内いじめは、会社の大きなリスク要因になり得ます。
一方で、社内いじめを職場全体の問題と捉えて対策を練っている話はほとんど聞きません。お局様への対策も、接する人が気を遣うなど、当事者に求められる事が多いです。
そのため、運悪くターゲットにされてしまった人は、ひとりで悩み、最悪、退職に追い込まれる事例も後を絶ちません。
私はいつもギモンに思います。
「お局様を生み出しているのは、職場の風土ではないだろうか」
「お局様対策は、当事者個人が行うものではなく、職場全体として取り組むべきではなかろうか」と。
そこで、今回は、お局様発生の原因と対策を職場視点で考えてみます。
お局様が発生する職場の特徴
お局様の仕事量が少ない
仕事が少なければ自己研磨に励めば良い。残念ながら、そのような理想論はお局様には通じません。お局様は、ヒマが多いほど、職場メンバーの粗探しをしたり、仕事に関係無い事をしたり、ウワサ話や陰口に花を咲かせます。
お局様の様子を見たメンバーは、「あの人はサボっているのに、私には沢山の仕事がある」、「マジメに仕事するのがバカらしい」などと思い、職場のモチベーションや業績が低下します。
お局様が職責を超えて介入する
粗探しに飽きたお局様は、職責を超えて「指導」してきます。
これを放置している職場では、メンバーの仕事量にバラツキがあったり、特定のメンバーに仕事が集中している事でしょう。不満も噴出しやすく、お局様とのいざこざも絶えません。
上司のマネジメントが不足している
お局様の仕事量や勤務態度を把握していなかったり、把握していても改められない上司のマネジメント不足も問題です。
例えば、管理者教育制度が無い会社の上司は、もしかしたら、マネジメントの方法はおろか、マネジメントという言葉さえ知らないかもしれません。こういう上司は、相談しても「俺の若い頃はもっと大変だった」と嫌がらせを軽視したり、取るべき対策を行いません。
メンバーの教育も不足している
嫌がらせは人権侵害の不法行為ですが、そのような教育がなされていない職場の人的問題解決能力は低いです。そのため、ひとたび問題が起きると、責任をメンバー個人に押し付けます。
このような職場は、メンバーのモチベーション低下のみならず、モラル低下も引き起こし、人的損失はもちろん、会社の信用低下や損害賠償責任リスクにもなり得ます。
会社の評価制度があいまい
お局様がサボっても、それ相応の不利益を受ける事が明らかであれば、「自業自得」として他のメンバーも納得できます。しかし、サボりが評価に反映されないならば、サボれないメンバーの不満は大きくなり、サボる人も増えるでしょう。
このような環境では、チーム全体のまとまりより、自らの損得が重視されます。問題解決を先送りしたり、自分に利があるメンバー(上司)にだけ協力するようになり、メンバー間はもちろん、部署間の関係も悪化していきます。
会社レベルでお局様問題に取り組むには?
お局様や職場によって解決策は色々です。アイデアありましたらコメント欄で教えてください^^
上司に管理者教育を行う
上司にお局様問題を解決する気が無ければ、職場としての解決は難しくなります。サボったり嫌がらせを行うお局様が、どれほど会社の損失になり得るか、上司に知っていただく必要があります。会社規定にいじめを抑止する内容を明記するのも一案です。
メンバーへの教育も行う
お局様やいじめを許さない風土を作るためには、上司はもちろん、メンバーも教育する必要があります。メンバーのなかには、学校などでいじめを黙認してきた方もいるでしょう。そのような対応は、職場では通用しない事を理解してもらう必要があります。
社内報や朝礼で、いじめを例示し、対策や懲戒、相談先などを示すのも有効です。いじめを解決したり人助けしたりすればプラス評価につながる制度の導入も一案です。
気軽に相談できる制度を整える
もし、上司がパワハラを行うのであれば、さらに上の上司に相談するなど、相談先を複数整え、相談者が不利益を受けない対策も取りましょう。
社内に相談できる環境が無い場合、労働組合や労基所に相談されて会社の評判を落とすばかりか、最悪、訴訟を起こされるかもしれません。
評価制度を明確にする
サボったら減給し、成果を出したら昇給するという、因果応報的な制度を整え、メンバーに周知する必要があります。ライフステージや仕事量に応じて勤務時間を短縮できる制度も設けましょう。
仕事を適性に割り振り、褒美と指導をシッカリ行う
人物ではなく仕事に対して賞罰を行い、賞賛は皆の前で・指導は個別に行います。
お局様に、職場は仕事を行う場所である事、お局様が「特別枠」では無い事を認識してもらいます。お局様がミスをした時も、他のメンバーと同様に指導し、お局様のターゲットが不必要にいじめられることも防ぎましょう。
くれぐれも、個人の人格を変えようと思わない事です。指導方法に個人差をつけるのもNG。問題のある人が生まれる要因は、適切な対処ができない職場にあるのです。
まとめ
人はそれぞれ違います。職場メンバー全員が良い子ちゃんであるハズはありません。私は個人的に性悪説を支持しています。いじめが無い事を前提とした発想ではなく、いじめが起こる事を前提にした上でそれを抑止する発想が大切です。学校でも職場でも、共通していることです。いじめの原因は当事者個人ではなく、環境全体にあります。
中村和彦らによる報告、職場における協働の創生-その理論と実践-でも、以下のような記述があります。この資料は全文34ページと長いですが面白い内容ですので、興味を持った方は是非全文を読んでみてくださいね。
職場における協働性は組織文化と深く関係しており、協働性を高めていくためには、職場内のネットワークや信頼関係、コミュニケーションや規範などの組織文化を変革していく必要がある。
組織文化や風土などの組織のソフトな側面は、その組織で醸成されたものであり、組織の構造や制度などをトップダウン的に変革しても短期的には変化しにくいものである。構構造や制度の変更という“外科的”処置ではなく、組織内のメンバーが対話を通して自らの問題に気づき、それらの問題に対して主体的に変革に取り組むという“漢方薬的”な働きかけが必要となる。
(略)
持続可能性が高い協働性の創生のためには、お互いの関わりから協働について学習すること、すなわち、組織内の当事者が自らの協働の問題に気づき、それを改善し続けることが必要であろう。
haniwaのヒトコト
今回は、あくまで「お局様」と表していますが、いじめの加害者は女性限定ではありません。
とはいえ、お局様のようなアクが強い人でも、個性を殺さずトラブルも起こさず働ける、そのような環境の整備が求められてくるのかもしれませんね。