安藤美姫選手の出産アンケートから見えてくるもの

2013年7月4日、週刊文春Webサイトで以下のアンケートが行われていました。

   (アンケートは中止された)

このような質問が平気でなされる事に、いち女性として薄ら寒い思いを抱いたので記事にしてみます。

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アンケートから見えたものは、働く未婚女性への根強い偏見

  1)あなたは安藤美姫選手の出産を支持しますか?
2)子育てをしながら五輪を目指すことに賛成ですか?

他人の出産について、なぜ自身の賛否の意志を表明しなければならないのでしょうか。しかも、その表現も「応援」などではなく「支持」や「賛成」。かなり上から目線ですね。

2つの質問は安藤選手に対する内容ですが、一部を一般的な言葉に置き換えると、今の日本がかかえる問題が透けて見えてきます。

「安藤選手」を「谷選手」に置き変え

まず、質問1の「安藤選手」を「谷選手」に置き変えてみます。

1)あなたは谷選手の出産を支持しますか?
2)子育てをしながら五輪を目指すことに賛成ですか?

谷選手は2005年に出産した後に復帰し、2008年の北京オリンピックで銅メダルを獲得しています。安藤選手と競技は違いますが、出産後に五輪に出て、しかも結果を残す女性は既にいらっしゃいます。

今回のような質問が、出産後に五輪復帰を考えている「初めての女性選手」に対して行われたならば、(それでも十分違和感を感じたでしょうけれど)話題に乗りたいという週刊誌の意図も分からなくはありません。

しかし、今回のアンケートは、谷選手という大きな前例があるなかで行われました。
私が大きく違和感を感じた点はここです。何故「安藤選手」に対してなのでしょうか。

「安藤選手」を「未婚で妊娠した女性」に、「五輪を目指す」を「仕事をする」に置き変え

そこで、質問1の「安藤選手」を「未婚で妊娠した女性」に、質問2の「五輪を目指す」を「仕事をする」に置き変えてみました。

1)あなたは未婚で妊娠した女性の出産を支持しますか?
2)子育てをしながら仕事をすることに賛成ですか?

いかがでしょうか。あくまで想像ですが、もし安藤選手が、谷選手のように、結婚→妊娠→出産→復帰という順をたどっていれば、このようなアンケートは行なわらず、あたたかく応援するにとどまったのではないでしょうか。

このアンケートは、一応「安藤選手」に対して行われていますが、五輪選手の出産→復帰は前例がある事、質問文が上から目線である事から、「働く未婚の母親はイケナイコト」、「婚外子は認めない」といった偏見が潜んでいるように思えます。

「働く片親」は誰もがなる可能性

少し話しが飛躍しますが、今は配偶者と子供を持ち働いている人でも、離婚や死別などで配偶者を失う可能性はゼロではありません。
つまり、「働く片親」への偏見は、未来の自分に向けられるかもしれないのです。

今回の質問は、配偶者も子供もいる「一般家庭」の方が考えたのか、独身の方が考えたのかは分かりませんが、もし、自分が将来「働く片親」になる可能性を考えられなかったのだとしたら、想像力が欠如していると言わざるを得ません。

想像力の欠如は、生活保護やイジメなど、多くの問題にも言える事です。

(ちなみに、安藤選手が片親かどうかは知りません。)

婚外子の支援を手厚くすることが少子化打開の一助になる

2013年5月11日の日経ビジネスオンライン記事「恋愛大国フランスの新大統領が示す人口政策の成果 ドイツに対抗すべく始まって140年」に興味深い内容があります。

それは、約50年で出生率が5割増になったフランスが行っていた政策です。

フランスの人口政策のもう一つの特徴は、結婚制度が柔軟であることだ。その成果の証が婚外子の多さに表れている。その割合はなんと新生児の50%を超えている。我が国でも増加傾向にあるものの、2%を少し超えたくらいで、大きな差がある。この背景には、フランスの婚外子を支える様々な支援制度がある。

柔軟な結婚制度の中で、特筆すべきはパクス(PACS)という制度だ。これは結婚と事実婚との中間に当たる。パクスを届け出ると、納税、社会保障の給付、相続などにおいて、結婚した夫婦並みのメリットをカップルとして受けることができる。「結婚はしたくないが、結婚の法的メリットは受けたい」というカップル向けの制度なのだ。現在は、「結婚3件に対し、パクス2件」の割合で申請されている。

フランスは婚外子への支援が充実しているのですね。

日本も、ようやく働く女性への支援に力を入れはじめましたが、育児休暇の取得を男性にも勧めるなど、「家庭ありき」の政策にとどまっています。
しかし、働く未婚女性などのマイノリティに対する上から目線や偏見、想像力の欠如がまかり通っているうちは、少子化の改善は難しいかもしれません。

ちなみに、アンケートの回答期限は7月7日(日)24時でしたが、当記事執筆中にアンケートに回答できなくなり、7月5日(金)15時付で中止のアナウンスがありました。

これも、創造力が足りないゆえの結末といえますね^^;

また、このアンケートが行われた数日後に、以下の報道がありました。

婚外子規定の最高裁弁論終結 明確な「違憲」求める

結婚していない男女間の子ども(婚外子)の相続規定をめぐる最高裁大法廷の弁論は10日午後、和歌山県で遺産分割が争われた裁判について開かれ、婚外子側が「生まれたことに何の責任も、選択の余地もないのに、差別されるのは法の下の平等に反する」と主張、はっきり違憲と判断するよう求めた。

弁論はこの日で終結。婚外子の遺産相続分を、結婚している夫婦の子どもの半分とする民法の規定について、大法廷は秋にも示す決定で違憲とする見通し。

午後の弁論は、和歌山県で01年11月に父親が死亡し、遺産分割が争われたケース。和歌山家裁は12年3月に規定を適用し、大阪高裁決定も支持した。

(北海道新聞・7/10)

なんと、婚外子への相続は、結婚している夫婦の子どもの半分とすると民法で規定されていたのですね! これは差別といわれても仕方が無いですね。違憲決定が出る事を祈っています。

今回の安藤選手へのアンケートも、このような婚外子差別を容認する社会的背景も原因のひとつになっているのかもしれませんね。

haniwaのヒトコト

もし私がアンケートに回答するなら、「ご出産おめでとうございます。今後のご活躍に期待しています」ですね^^!

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