これからの日本は、寿命は延びる一方で、若者人口は減っていきます。増加する医療費・社会保障費を穴埋めするために定年も上がると思われますが、「給与は仕事の対価」という考えに基づいた同一労働・同一賃金が世界に広がれば、日本のような年功序列型賃金は維持が難しくなり、ひとつの企業にずっと勤める働き方は難しくなっていくでしょう。
そんななか、著者は、「職業人生は二回ある」と考えることを提案しています。非常にユニークで共感できる内容でしたので、今回記事にしてみます。
「働くこと」と「生きる意味」を切り離す
どんなに頑張っても売上げが上がらない仕事や、リストラやコスト削減ばかりが行われている職場で、仕事から人生の意義を感じ取るのは、容易ではありません。それならばむしろ、「働くこと」と「生きる意味」を切り離し、仕事からは生活費とスキルだけを得て、仲間や、社会からの承認、そして生き甲斐に関しては、ボランティアや趣味のコミュニティから得ようと考えるのも、極めて合理的な判断です。
(p123)
景気が右肩上がりで終身雇用も成り立っていた頃は、「働くこと=生きる意味」ととらえ、生涯ひとつの会社で安心して働くこともできました。
しかし、今では、「働くこと=生きる意味」という考えは、退職や再就職をネガティブに扱い、会社を辞める事への抵抗感を増長し、果てはいわゆる「ブラック企業」の温床につながっています。
人生を充実させるためにはもちろん、危険な会社や仕事から離れやすくするためにも、「働くこと」と「生きる意味」の活動は分けた方が良いと、私も思います。
職業人生は二回選ぶものと考える
就職活動の際、自分のやりたいことが見つからずに悩む若者が多いようですが、「職業人生は二回ある」という前提に立ち、最初はとりあえず目の前にある仕事をしてみて、その間に、自分が本当にやりたいことを見極め、後半人生はそれを中心に設計すればいいのだと考えれば、就活もすこしは気楽になるはずです。
(p157)
例えば旅行では、はじめて行く所は名所を巡るツアーに乗っかり、二度目以降は行きたい所に行く、というプランにしたりしませんか? 働き方もそれと同じで、二度目の選択時には自分のやりたいこと、やりたくないことが明確になっています。
また、若い時には楽々行っていた仕事も、老いてきたらキツくなってくることもあるでしょう。著者も、若い頃は外資系の会社で世界を飛び回っていましたが、そのような働き方を定年まで続ける事に疑問を持ったそうです。
自分の考えや年齢、ライフステージは日々変化していきます。それに合わせて仕事を変える事は、オーストラリアや欧米では当たり前ですが、残念ながら日本の会社は遅れています。
しかし、日本社会の改善を待つだけの受け身姿勢では、いざ二回目の職業を選べるようになっても何もできない・・・という事になりかねません。心から楽しめる活動を見つけておく準備は必要です。
オリジナル人生を設計するために
1.手に入れたい人生を明確にしよう!
手に入れたいものが明確になるのは、最も重要な、そして最初に必要なステップなのです。
検討すべきは、「そんな生活で食べていけるだろうか?」ではありません。確認する必要があるのは、「そんな生活を、本当に自分は楽しいと思えるのか?」ということです。それさえできれば、他のことが満たされなくても(=たいしてお金が儲からなくても、世間から褒めてもらえなくても)幸せで楽しいと思えるのか、ということです。
(p197)
「お金になるかどうか」は、つい私も考えてしまいますが、お金があれば幸せになれるという保障はどこにもありませんし、また、世の中には、不動産や子供を諦め、少ないお金でミニマムに楽しく暮らす人もいます。
「お金は少ししかもらえないけど楽しいこと」と「お金はたくさんもらえるけど嫌なこと」なら、前者の方が人生を楽しめそうですね!
2.複数の将来シナリオをもとう!
どんな分野にいる人も、働いて数年たったら、将来ありうる働き方のモデルを5つ程度、言語化(シナリオ化)し、自分の進みたい道について意識的になるべきです。そして、数年ごとにそのモデルを見直し、進むべき道を定期的に選びなおすのです。そうすれば、40代半ばに第二のオリジナル人生を設計するのは決して難しいことではありません。
(p205)
著者は、数年ごとに5つ程度の選択肢を考えておくことを提案しています。
本書の例では、営業として就職した場合なら、「様々な部門を経験しながら出世を目指す」、「出世は目指さずに一貫した専門分野でキャリアを極める」、「営業のプロフェッショナルを目指す」、「講演や執筆を行い、経験知の伝道者となる」、「企業する」といった感じです。
人生も働き方も一本道ではありません。変化に合わせた選択をする訓練にもなりますね!
3.市場で稼ぐ力をつけよう!
市場から稼ぐ力がないと、せっかく将来を見据えて複数のシナリオを考えても、組織に守ってもらう以外の選択誌を選ぶことができません。反対に、市場が求めているものを提供する力と自信が身につけば、未来に向けて選ぶことのできるシナリオは、今よりずっと自由で多彩なものになるでしょう。どんな分野で働く場合でも、市場感覚こそが「稼ぐ力」に直結するのです。
(p207,208)自分で生きていける人になりたいなら、(たとえ名刺をもっていても)敢えて名刺を使わずに何かにチャレンジする、敢えて名刺の価値がない場所で自分を試してみる、といった体験をしてみるべきでしょう。
(p213)
著者は、知識やスキルを活かして一定額を稼ぎ、残りの時間を仕事以外の活動に当てて、オリジナルな働き方を設計することは、多くの人にとって現実的なキャリアパスになると提案しています。
変化を怖れて過去にしがみつくのではなく、変化を前向きに受けとめ、新しい時代の可能性を楽しもうとする姿勢が、時代の変わり目には重要です。そして、そういった心もちの違いや少しの準備によって、私たちはきっと明るい未来を手に入れることができるはずです。
(p218)
haniwaのヒトコト
私が勤める会社は数年前にリストラや部署の統廃合がありました。その様子を間近で見てきたからこそ、収入をひとつの会社にゆだねたり、生涯ひとつの会社に勤めると決めることのリスクも身に沁みて感じています。
自分の人生をどう生きるか。変化するべき時期が来たら変化できるよう、収入の分散化を進めていきます!