今後は海外で働く事が一般的になっていく-「ノマド化する時代」感想


ここ数年で話題になっている言葉のひとつに「ノマド」がありますが、私はこれまで関連書籍を読んだ事はありませんでしたので、この度、手にとってみました!

著者は、「ノマド化」の概念を以下にあげ、会社の庇護を失い、個人は無理やり放浪者として「ノマド」にならざるを得ない時代が来ると推測しています。

①近代国家ではなく、グローバル企業・個人が主役になる新しい中世の到来
②中心がなくなり、世界中に離散する組織や個人の形態

本書は、前半ではノマドの定義、中盤ではノマド化のなかで生きる人の事例紹介、後半では来るべきノマド化時代を生き残るヒントが述べられています。

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時間と場所にとらわれない働き方を可能にした3つの要因

  • クラウド技術の進歩
  • フリーランス活用の高まり
  • 物価差の利用(逆オフショア)

(p206-212)

1番目と2番目だけであれば、「自宅で小規模の副業を行いハッピーになれる時代が来た!」とワクワクできますが、3番目の「物価差の利用(逆オフショア)」は人件費の高い日本人にとって脅威です

日本では、非正規雇用者が年々増加し、2013年には3割以上にものぼります。この事だけでも大きな論議をかもし出していますが、今後は、日本にやって来た外国人労働者がさらに安い賃金で仕事を請け負うようになるでしょう。実際、日本で国家資格を目指すインドネシア、フィリピン、ベトナム国民を対象に、看護師・介護士候補を受け入れる制度も整ってきています

外国人労働者は、これまでは農業など低賃金で人気のない仕事に多く就いていましたが、今後は医療など高賃金な分野での就労も進むでしょう。

一方、日本企業の業務の多くが、工場はもちろん、財務や研究開発といった本社機能でさえ、続々と海外に移動しています。GoogleやAppleが租税回避地に本社所在地を移転して節税している話も記憶に新しいですね。

このように、クラウド技術の進歩や、フリーランス活用の高まりによって、企業がコストの高い国にとどまるメリットはどんどん少なくなってきています

このような動きから、日本国内の賃金はどんどん低下していくであろう事は想像に難くありません。

肩書きではなく、何ができるかを問われる時代がやってくる

 国境という枠組みや、会社の組織という枠組みに閉じ込められることなく、自由に世界を行き来できる人。国とか社会に寄りかかるのではなく、個人として、国や会社と対峙できる人。これがノマドの本質だと思う。
(中略)
すべての人が、国や会社におんぶにだっこではなくて、むきだしの裸の社会と向き合って、個人として一対一で勝負していくことが求められる社会になる。
(中略)
日本人もいつかは気づくはずだ。いつか国が国民を支えきれなくなって、ある日突然、自己責任です、好きなように生きてくださいと放り出すときがやってくることに。
(p226-228・強調は著者によるもの)

現在ノマド化が進んでいる、というより進めざるを得ない分野で個人的に思い当たるのは、TPP参加を突きつけられた一次産業ですね。

生産者が自ら生産した食物で商品加工を行う6次産業化が数年前から持てはやされ、国や自治体からの補助金も出ていますが、個人的には、この6次産業化はTPP参加と表裏一体になっているように思います。

つまり、「一次産業はTPP参加でもっと苦しくなるよ。やる気のある生産者や関連企業の6次産業化や機械導入、規模拡大、輸出参加などは補助するけれど、やる気の無い生産者は知らないよ。これからは自己責任で一次産業に取り組んでね」という事になるかもしれません。これはまさに、著者が指摘する「ある日突然、自己責任です、好きなように生きてくださいと放り出す」ではないでしょうか。

また、海外で活躍する生産者も登場しています。

例えば、2013年現在、北海道からシベリアに渡って農業を行うプロジェクトが進められており、北海道の大手地方銀行がサポートしています。福島原発事故の影響で営農が困難になった福島県のコメ農家がオーストラリアで農業を再開するいわきワールド田んぼプロジェクトも注目されていますね。

土地に縛られる産業としての認識が強い農業であるにも関わらず、海外で活躍する方々は、まさしく新天地を求めて移動するノマドと言えるのではないでしょうか。

著者は、ノマドに共通する特徴として、①所属ではなく個人、②フラットに考える、③身軽さを保つ、④現地に溶け込むをあげ(p230-238)、今後は海外で働く事が一般的になっていくと予想しています。

この流れは、国民ひとりひとりに問われることでしょう。正社員から非正規社員へ、日本人労働者から外国人労働者へ、そして日本から海外へ。労働力の流れと賃金の低下は、今のところとどまる事を知りません。

著者は、そのような時代にこそ日本人の強みに希望を見出しています。

 私は、日本人は、<トランスヒューマン>の筆頭になれると思う。
 そのためには、新しくノマドの気質を取り入れるとともに、世界を見て、日本人という内輪ムラ社会の調和ではなく、本当の世界的な調和を考えられる感覚を養う必要がある。そうすれば、日本人のノマドのなかから、二一世紀の未来の歴史をつくる<トランスヒューマン>が数多く生まれてくるものと確信している。

haniwaのヒトコト

先日2013/8/20にも、派遣労働者の業務拡大の提言がなされました。賃金低下への動きは「当たり前」になりつつあります。

いざ自分の身にふりかかったときに慌てないためにも、スキルと見聞を深め、心の備えをしておくことは、今からでも遅くはありません。

私も、会社以外で収入を得られる能力を磨いていこうと思います。

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