先日、以下のニュースに引き付けられました。
部下の相談、無視し続けること1年半 道、男性職員を懲戒処分
道は29日、部下2人に対し、話しかけられても無反応で、目を合わせないで無視するなど不適切な言動を繰り返したとして、渡島総合振興局の出先機関の男性職員(58)を、減給10%1カ月とする懲戒処分を発表した。
道によると、男性職員はオホーツク総合振興局在籍当時の2011年6月から13年1月まで、部下が課長の代理決裁を求めても対応を拒否したり、相談を受けても取り合わなかったりしたという。
(2013/3/29 北海道新聞)
今回は、この内容に対する私の考えを書いてみます。
これはパワハラである
2012年1月30日に厚生労働省が報告した「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」によると、「話しかけられても無反応で、目を合わせないで無視する」という行為は、「職場のパワーハラスメントの行為類型」の人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)にあたるり、れっきとしたパワハラです。
パワハラを行った職員を処分した北海道庁の対応については、個人的には一定の評価はできますが、処分の内容は「減給10%1カ月」という、金額にしたら数万円から十数万円程度の軽いものでした。パワハラを受けた2名の部下への補償の有無や、再発防止策についても、記事を読んだだけでは分かりません。
通常は、パワハラを発見したからといって、すぐに懲戒免職処分にはなりません。まずは、本当にそのような事が行われているか、実態を調査します。パワハラが事実と分かっても、いきなり懲戒処分ではなく、注意や謹慎など、軽い処分を行います。
もっとも、今回の件は、パワハラ行為に対して毅然とした対応を行うため、処分の内容が注意や謹慎にあたる段階でも「懲戒処分」という名目にしたとも考えられます。そうであれば、処分の内容が軽い点も納得できます。
しかし、今回の記事で私が最も驚いた点は、パワハラ行為が1年半も行われていた事です。
問題があるのは加害者だけではない
先にも述べた通り、パワハラの発見から処分に至るまでは、ある程度の段階をたどります。パワハラ行為が行われていた1年半もの長い間に、何故、職場の中で改善できなかったのでしょうか。例えば、職場でパワハラに対する教育を行ったり、パワハラを起こしている職員に注意やカウンセリングを行ったり、業務内容を改善したり、異動を検討するなど、職場の中できる改善策はいくらでもあったのではないでしょうか。もし、これらの対策が行われていないとするならば、問題があるのは職員ではなく、職場環境そのものなのかもしれません。
パワハラの原因としてよく言われているのは、被害者によるもの(仕事のミスが多い部下等)、加害者によるもの(上司の性格に難あり等)、会社ぐるみによるもの(退職強要等)があり、実際に、いわゆるブラック企業では、自己都合による退職を促すために陰湿なパワハラが行われていますが、今回は公務員で行われているため、加害者が他の上司の指示を受けてパワハラを行った事は考えにくいです。そこで、私はもうひとつの原因として、「パワハラに無関心な職場」を加えたいと思います。
今回のニュースも、1年半にも渡ってパワハラが行われ、「懲戒処分」で決着をつけた原因は、もしかしたら、職場全体がパワハラに無関心で、言いたい事が言えないか、言える場所が無いといった、コミュニケーション不全を起こしていた可能性もあるかもしれないと、私は感じました。
意外と多いパワハラ被害者
パワハラそのものは、多くの職場で経験があると思われます。実際に、以下のような報道もあります。
パワハラ「受けた」 4人に1人 管理職が最多 国が初調査
「民間企業に勤める人の4人に1人が職場でパワーハラスメントを受けた経験がある」
「パワハラがある職場には「上司と部下のコミュニケーションが少ない」といった共通の特徴がある」
「大企業を中心に7割の企業が相談窓口を設置している一方で、窓口を利用した被害者がほとんどいない」
(2012/12/12 日本経済新聞)
職場でのパワハラは、定義や立証が難しいうえに、人事評価への影響を心配して泣き寝入りしている被害者も多いでしょう。
パワハラを受けた事による仕事のパフォーマンスの低下や、精神疾患で休職した場合の損失額、訴訟が起きた際の費用も見過ごせません。
問題があるのは実は職場環境であるにも関わらず、パワハラ行為をいち個人の責任としてしまったがために、職場環境は改善されず、今後もパワハラ行為が続けられる。それにより、生産性の低下による会社のコストが増大し、果ては医療費や雇用保険といった税金も消費されてゆく・・・というのが、私が思う最悪のシナリオです。これを防ぐために、加害者を「懲戒処分」にする前に職場全体で改善できるように、職場そのものの問題解決力を上げていく事が、今後ますます必要になってくるでしょう。
職場で泣き寝入りしないために
「勤め先はブラック企業だから」そんな愚痴を冗談半分でも、居酒屋で、同窓会で、家庭で発したことがある―。身に憶えはありませんか?実はそれらは改善したり、損を取り返すことが可能なことも多いのですが、「法律も手続きもよくわからない…」という方が大半です。このダイアリーは、アドバイスに従って書き込むだけで、法的証拠にもなるツールです。これを利用して「勤め先がブラック企業だったんだけど」と過去の笑い話にできる快適な仕事を目指しませんか。
厚生労働省国立病院機構静岡てんかん神経医療センターのパワハラ訴訟はご存知ですか?