ママが地方で働くための3つの課題

先日、近所のママさんとの話のなかで、気になるフレーズがありました。それは、「地方に住む母親には働ける場所が少ない」という事です。

私自身、このことは肌で感じてはいましたが、実際にはどうなのだろうかと改めて調べてみたところ、地方で働くママにとって、大きく3つの課題が浮き上がってきました。

今回は、「ママが地方で働くための3つの課題」を書いてみます!

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1.事業規模が小さい会社は育児・看護休業制度が整っていない

会社に育児休業制度があるかどうかは、事業規模に比例します。

実際、平成24年度の雇用均等基本調査(厚生労働省)をみても、近年は改善傾向にあるものの、事業規模が小さいほど育児休業制度や子供の看護休暇制度が整っていない事がうかがえます。

事業規模と育児休業制度  (平成24年度雇用均等基本調査 事業所調査結果概要

事業規模と看護休暇制度  (平成24年度雇用均等基本調査 事業所調査結果概要

子供のための休暇制度が整っていないと、妊娠・出産を期に退職を考えてしまいます。あるいは、肩をたたかれる事もあるかもしれません。
また、地方(人口が少ない地域)は、働ける場所が少ないことはもちろん、働けても個人経営などの中小企業が多いです。

そのため、妊娠・出産後も同じ職場で働き続けられない女性は、地方に行けばいくほど(人口が少なくなるほど)多いのではないかと思われます。

2.フルタイムで働けないと正社員採用は難しい

地方に限った事ではありませんが、妊娠・出産で一度会社を辞めると、正社員としての再就職が難しいです。

2012年平均の労働力調査詳細集計でも、雇用者(役員を除く)に占める非正規雇用労働者の割合は35.2%で、女性だけでは54.5%にものぼります。

「平成23年版 働く女性の実情」(概要版)(厚生労働省)では、その原因として、以下の3つが指摘されています。

  • 子育て期の男性の約5人に1人が週60 時間以上就業している
  • 夫の家事関連時間が1時間に満たず、妻が家事関連時間の多くを担っている
  • 中途採用者には継続的な就業やフルタイム勤務が求められているため、出産後は(仕方が無く)「パート・アルバイト」として就業する女性が多い

母の就業変化をあらわす図をみても、出産後は「常勤」が減り、「パート・アルバイト」が増えている事が分かります。

母の就業状況の変化  (「平成23年版 働く女性の実情」(概要版)(厚生労働省)

私の知人の子育てママさんが面接の際に最もよく聞かれた言葉は、「お子様の具合が悪くなった時に、お子様を預かってもらう人はいらっしゃいますか?」だったとの事。つまり、子供の具合が悪くなった時は、有給を取るのではなく、子供を誰かに預けて出社する事を前提としています。この話からも、中途採用者にフルタイム勤務が求められている現状がうかがえますね。

ちなみに、このママさんは、近場に預ける人(おばあちゃんなど)が居ません。それが原因かどうかは分かりませんが、正社員はことごとく不採用だったそうです。このママさんは、子育て後はパートで働くようになりました。

その結果、男女の給与格差も広がります。2012年12月には以下のような報道もありました。

日本は働く母親冷遇 OECD報告

子育てをしながら働く日本の女性は、男性との給与格差が先進国で最大―。先進34カ国が加盟する経済協力開発機構(OECD)が17日発表した報告書で、日本では働く母親が不利な労働環境に置かれていることが明らかになった。

報告書は教育や労働条件などについて各国の男女間格差を比較。育児期に当たる25~44歳のフルタイム労働者の給与(主に2008年)を調べた結果、日本では子どもがいる女性の場合、給与の中央値が男性よりも61%低く、データのある30カ国中、男女間の差が最も大きかった。30カ国の平均は22%。

(47NEWS・2012/12/18 05:45)

また、@Radertさんから、職業訓練所と民間が結託して雇用先を決めている実例をいただきましたので以下に転載いたします。(念のため、固有名称は一部伏字にいたしました)

妻はニ○イ経由で同じ勤務先に6年間、フルタイムで勤務しています。妊娠したと伝えると「じゃぁ余り働けないわね、パート扱いになるんで手続きを」と格下げの話になり、産休?休業補償?そんな話には一切なりませんでしたよ。3年間で正社員雇用?そんなの都市伝説ですw

この話を掘り返すとハローワーク時代まで遡ります。職訓講座に「医療事務」があるんですが、何のことはないニ○イとハロワがガッチリ組んでニ○イでしか通用しない医療事務資格を取得させ、クソ高いテキスト代は失業保険の中から支払うと言う凄いシステムだったんですよ。

ニ○イで講習を受ける間に、ニ○イ側に従順な性格か、遅刻・欠席はないかを値踏みされて、講習を受け終わった頃には(本人の希望はさて置き)ニ○イ側に派遣先を決められているんです。真面目な人程過酷な派遣先を斡旋させられるようで、真面目で我慢強い妻は貧乏クジをw

ウチは共働きなので「妊娠するまで」と思ってましたが、独身女性にとってはワープワ強制所そのものですよ。時給勤務ですから病欠は勿論、転職活動の時間も取れません。生かさず殺さず、代わりは幾らでも居る、これが実態です。

失業保険でテキスト代を払い、斡旋された過酷な派遣先でフルタイムで働いていても、妊娠が分かるとパート扱いにされるなんて、労働者を使い捨てる現状が浮かび上がってきますね。

2013年6月14日に公表された第14回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会 資料の、労働者派遣の現状と今後の労働者派遣制度のあり方の30ページ目には、出産や育児で仕事を離れた女性のニーズを派遣が満たす、という内容が書かれています。

女性の就業率と女性の派遣浸

しかし、先に述べたデータをみる限り、会社の制度が整っていなかったり、フルタイムで働けないことが原因で、妊娠・出産後は仕方無く派遣社員として働いている人もいらっしゃると思われます。

これらの現状や問題から目を逸らし、安易に派遣を推進していくのは、個人的には賛成できません。

3.収入格差が広がる

上の1、2の課題のため、妊娠・出産で一度退職した(退職せざるを得なかった)女性が、子育て中に安定した仕事に就く事は、非常に困難です。一度辞めてしまうと、次に働ける場所は必然的にパートやアルバイトになります。

そのため、妊娠・出産前に務めた職場の育児・看護休業制度の有無や、実際に取得できるかどうかで、その後の働き方=収入がガラリと変わってしまい、妊娠前から子育て中もずっとひとつの職場で正社員として働けたママさんと、子供が生まれる時にいちど退職してパートで働き出したママさんとの間で、収入格差が広がってしまう現象が起きています。

最近、政府が女性管理職の登用を進めていますが、これまで述べた情報から、妊娠・出産していない女性ほど、ひとつの会社で長く働けることから、より管理職になりやすいといえます。実際、「母親である女性はキャリアを断念しており、子供のいない女性だけがキャリアを続ける可能性がある」という指摘もあります。

実際、私も職場でも、偶然かどうかは分かりませんが、昇進している女性には子供がおらず、当然長期休職も取得していません。

今後、国をあげて女性管理職の登用を増やしても、その多くが未婚や子無しの女性であれば、子供の有無により女性の収入格差は広がってゆくでしょう。その結果、家庭の財布のヒモもきつくなり、場合によっては子供を産むこと自体をあきらめ、日本経済もますます停滞していくでしょう。

なお、この現象は、子育てだけではなく介護でも同様の傾向があります。

また、これらの事が原因で、条件の良い職場を求めて地方から都会への移住が加速すれば、ママさん同士のみならず、都会と地方の収入格差も今後さらに広がっていくでしょう。それは将来の少子化や就労者の減少に直結し、財政(税収)が苦しくなり、中小企業も立ち行かなくなるという負のスパイラルに陥ります。

2007年で既に、以下のように指摘されています。

日本の人口は、総数が減少し始めた中で、地方圏から三大都市圏へシフトする傾向を強めている。
地方圏に残った人口についても、地域ブロック内の中心的な拠点都市に集まる傾向にあり、地域内での一極集中が進んでいる。
今後、総人口がより一層減少していく中で、こうした傾向が続くとすれば、拠点都市とそれ以外の地域の間で、人口に起因する地域間格差が拡大していく可能性がある。
みずほ制作インサイト 2007年3月30日発行

地方を衰退させないための一案として、中小企業の育児・看護休業制度の充実が望まれます。

haniwaのヒトコト

産業が少なく、中小企業も多い地方で、会社の給料がすべての収入源にする事は、都会よりもハイリスクと言えます。

個人的な対策としては、地方に住んでいる事がデメリットにならない稼ぎ方、例えばネットを活用したお小遣い稼ぎを提案します。広告収入を得たり、クラウド・ワーキングで仕事を受注するなど、サラリー以外の収入源があれば、会社にしがみつかなくても良くなりますし、地方の税収もアップします。

私は、地方こそ、複業やクラウド・ワーキングを推奨したら良いと思っています。

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