1.測定を始める前に
値のちょっとした変化に一喜一憂するのではなく、どれぐらい変化があって当たり前か(測定の限界)を知り、それを超える変化があった時には注意をする、といった扱いが必要になります。
(1)測定条件をそろえる
測定時の高さをそろえたいときは、機械本体におもりのついたタコ糸等(引っ張っても伸び縮みの無いもの)を結びつけ、長さを測定したい高さと合わせるとよい。
タコ糸の先のおもりを地面に接触させて測るようにすればメジャーを持ち歩かなくても毎回の測定高さを正確にそろえることができます。
測定条件は測定値そのものと同じぐらい重要な情報です。必ず記録して測定値と一緒に示すと良いでしょう。
(2)測定値が安定するまで待ってから読み取る
放射線が出てくる現象は確率的であるため、できるだけ正確な測定を行うためには、測定器同じ場所で一定時間を置き続ける必要があります。
測定値が安定するまで待ってから値を読み取るようにしましょう。
(3)測定機器のコンディションを保つ
放射線は目に見えないため、放射線を出すチリが機械に付着していても気づきません。
チリが付着してしまうと、それ以後はそのチリが出す放射線を余分にカウントしてしまい結果がおかしくなってしまいます。
これを防ぐために機器をビニール袋等に包んで使うようにしてください。
放射線(ガンマ線)はビニール袋を素通りするので、何重に包んでも値に影響することはありません。
2.最初に測りはじめる時に
(1)測定値のばらつきを確認してみましょう(再現性の確認)
まず、同じ場所・同じ測定条件で何度か測定し、値を記録してみましょう(できれば10回ぐらい。多いほど良い)。
1度目の測定の後、通常の使い方で(普段、測定毎に電源を入れて測っているのであれば一旦電源を切って入れなおす)、なるべく同じ測定方法となるようにして測定を行ってみます。
得られた値の平均を取り、毎回の測定値がどれぐらい平均値と違うかを確認しましょう。
これが、その測定器を用い、あなたが測定するときの測定値のばらつきのおおよその目安です(厳密には、多数回の測定で標準偏差等を求める必要があります)。
また、自分の行った測定を評価するとき、このばらつきを大きく超える変化があった時は意味のある変化であると言えます(他人のデータと比較する場合は別の注意が要ります)。
もし測定結果を他の人に示す場合、個別データに加え、ばらつきの評価方法も示すことで、データがより有効なものになります。
(2)目的にあわせ測定方法,手順を決めましょう
2回の測定を行い、(1)両者の値がばらつきの範囲内の場合はその平均を取る(2)両者の値の差が先に確認したばらつきの程度を超えている時にはどちらかが異常値があると判断し、さらに2回の追加の測定を行って(合計4回の測定を行って)最大値と最小値を除いて平均を取る。
60秒間の放射線計数値を平均して値を表示するタイプの測定器の例では、1回目の測定と2回目の測定の間には60秒以上の間を置くのが正しい方法です(途中で電源を切る必要はありません)。
3.測るときに
(1)その場所が安全かどうかを見極めるために場所毎の放射線量を測りたい
場所以外の条件をそろえて測定してください。
高さがある点で測定する場合、周囲の建物や設置物、起伏等の影響を受けることがあります(できればグラウンドのような開けていて平らな場所が良いでしょう)。
また、少し場所を移動して数度同じように測定してみてください。
これで値があまり変わらない時は、その平均値をその場所での測定データとして良いでしょう。
逆に値が大きく変化するようだと、データの扱いには慎重さが必要です。
狭い範囲で値の高いところ、低いところが生じているかもしれませんし、測定条件のそろえ方が悪いのかもしれません。
このようにして得られたデータを比べる時には、同じ条件で測ったデータ(最低でも測定高さがそろっていること)の間で比較をしてください。
また、測定条件はできるだけ詳細な記録をしてください。
日時、場所(再び同じ場所で測定できるレベルの記録)、地面の状態(アスファルトか土か草地か等)、測定条件等。
(2)今現在、いつもよりたくさんの放射性物質が飛んできていないか確かめたい
全く同じ場所、同じ条件で測定することが重要です。測定値を継続的に記録し、ばらつきのレベル以上の変化があった時は注意が必要です。
また、測定条件をそろえ、変化を見るという意味では、公的機関での測定の方が据付型で場所等の測定条件の変化がなく、良い機器を使っていることから精度が高くなるのが一般的です。
値そのものではなく変化をみたいのであれば近くの観測点のデータを参照するのも有効です。
(3)食品が安全かどうか確かめたい
食品に含まれるごく微量な放射性物質を検出する目的に使える、安価に入手できるポケットタイプ放射線測定器は今のところ無く、また、周囲からの放射線を遮ることのできる環境での測定が必須になため、食品の測定は難しいでしょう。
4.データの公開
(1)測定データを公開する時は必ず測定条件を併記する
測定条件が記されていないと測定データの価値はほとんど失われてしまいます。できる範囲で詳細に記してください。
日時・場所・高さ・地面の状態(土かアスファルトか草地か/濡れていたかどうか等)・周囲の建物等の状況・天候・測定詳細(3回測って平均を取った等)・その他。
(2)共通の測定条件も記しておく
最初に行ったばらつきの確認時の全ての測定値を、設定条件と共にそのまま全部書き記すことはとても重要な情報を与えてくれます。
このデータはぜひ参照しやすい場所に示してください。これが測定の信頼度を証明します。
他に、測定器の機種名や、校正を行ったかどうか、校正を行った場合はどのように行ったか等の情報はとても重要です。
(3)データの取捨選択には注意する
明らかに測定ミスをしたデータを載せる必要はありませんが、公開するデータの取捨選択の仕方によってはデータを活用する人の判断を狂わせてしまうことがあります。原則的に測定したデータは全て公開する方が良いかもしれません。
(4)他の人が使いやすい形でデータを公開する
データの公開には色々な方法がありますが、表計算ソフトで作成したファイルをそのまま公開すると他の人がそのデータを活用しやすくなります。
使いやすい形で元のデータを公開すると詳しい人が分析をしてアドバイスをくれたり、多くの人に役立つデータに加工してくれるかもしれません。
ただ、データの取り扱いが難しいと感じた時は、表計算ソフトに入力した未加工データをそのまま公開してしまってかまいません。